↑3・外出 †  朝決めた予定通り、外出のために荷物などを準備をする。外出するときは、淡い青色のよけタイガー、アクアと一緒である。 アクアは、おとなしい小柄なよけタイガーであるが、いつも森沢を支えてくれている、頼もしいパートナーだ。  森沢には、普段から足しげく通っている場所がある。 それはネコリスたちとの思い出の場所であり、どんなに仕事が忙しくても、そこに行く時間をとても大切にしていた。  現在は、植林作業中のその場所。森があったころとはまるで風景が違うが、森沢は一歩一歩近づくごとに、ネコリスたちと会えたときを色鮮やかに思い出していた。 ここが確か、ネコリスの森のちょうど中心であった場所。木々が生い茂り、枝の影からひょこりとネコリスが顔を出してきたこともあった。 この場所に足を運んでしまうのも、少しでも早くネコリスたちが帰ってこられる環境を取り戻したいという願いからである。 「いつもお疲れ様です。森沢さん。」顔見知りの作業員が声をかけてきた。 『こちらこそ、いつもお世話になっています。』 『少ないですけど、これ、皆さんで食べてください。』と、差し入れを取り出す。 「おぉ、ありがとうございます。」 作業員が差し入れを受け取ると、わぁ、と何人もの人の声があがった。 「アクアも元気そうだねー。」頭を優しくなでられるアクア。うれしそうである。 『作業の調子はいかがですか?』 「予定より少し遅れてはいますが、みんなが頑張ってくれているので、何とか順調に進んでいます。」  それから森沢は、たくさんの作業員に挨拶を済ませると、植林が進む大地を歩き続ける。と、ある道の脇で突然立ち止まった。 何の変哲もない道の脇。何もないその空間を見て、驚きと歓喜のちょうど中間くらいの声をあげる。 その道は、いつも森沢が通い続ける道。その道の脇は、いつネコリスたちが帰ってきてもいいように、森沢がねこりすごはんを置いた場所である。 だが、そのねこりすごはんがない。  その事実に感動と来てくれたのかなという期待で満ちた瞳で、周囲を見渡す。その瞳に応える相手はいなく、ただ優しい風が吹くだけであった。 風が吹いた先を見つつ、来てくれたかもしれないという事実に感動する森沢。ほわわーんである。  森沢は、ほわわーんとした気持ちを落ち着かせると、同じ道の脇にねこりすごはんを置き、  いつかまた、ネコリスたちに会えることを思い描きながら、思い出の場所を後にした。