手に持った袋をぐるぐる回しながら、タンポポへの道を歩いていく、  澄んだ空気が、視線を広げてくれるため、あまり歩くのに不自由はない。  視線の先に、マントをまとった、小さな少年が入った。 「ユウタくーん、たーだーいーまー」  手を振って名前を呼ぶ、  胸の中に南国の暖かい空気が入ってきた、ユウタと呼ばれた少年は、温度など感じていないように首を振るとこちらを向いた。  こちらを確認したユウタが腕輪を外すのが見えた、一気に走って側まで行く。 「はい、たのまれたもの」  食料品として頼まれた物をユウタに渡す、マントの下にそれらをしまったユウタがしばらくもぞもぞとマントの下で手を動かしていた。 「老廃物とかからさっき作ったペレットを作るんだ」  なにしてんだろ? そういった司の視点に気づいたユウタが言った一言に、ちょっとだけドキドキした、すぐ自己嫌悪に変わったが。  コレはそういう趣味にはいるのだろうか、いや、入らないだろ、むしろそういう考えが失礼だ、くるっと考え方を変えた司にも気づかず、ユウタが兄貴に作ってもらった服をうれしそうに自慢している。  その言葉に会わせるように、コウタの目が光っていた、どうやら肯定を表しているらしい。  すごい技術力、多分、アイドレス内でもそう無い発想できて居るんだろう。  いろんな世界のACEと付き合ってると、ものすごい驚きの連続だ 「コウタさんはすごいんですねー」  再び目が光る、多分喜んで居るんだと思う。少し筒だが、何となく簡単な受け答えぐらいは分かりそうな気がしてきた。  うれしくなってご飯を食べる司をずっと、ユウタは見ていた気がする。  食べ終わった司に、ユウタがケーブルを二本出した、ケーブルを見ていくとそれは知立につながっていることが分かった。  マジックテープで、一本を自分の二の腕につけると、もう一本を司の二の腕につけてくる。  すこしちくっとした、痛そうな顔をする司 「兄貴が一番、消費エネルギーが少ないんだ」  その言葉が、司の聞いた最後の言葉だった。  そして三年の月日が流れた  核の炎に包まれた小笠原の中で、司は懸命にユウタを捜していた。  小笠原は地獄とかしていた、小笠原が小笠原を喰らい、植物もみな小笠原にとかして、動物を小笠原にする。  そんな小笠原地獄の中でも、司は希望を捨てずに、立ち向かっていった。 しかしそれは本当に希望だったのか、ただそれに頼っていただけはないのか。  人は地獄を見つめ続けるより、希望を持って進み出す、誰が言った言葉だろう。    そんな夢を見たとはとても言えない、それほど凄まじい光景だった。  ユウタを通してみる光学センサーによる朝は、自分の視線では永遠見ることが出来ないであろう、幻惑的な光景だった。 「竜だ………」  肉眼で、辺りを見回してみる、そこには美しい朝があったが、竜は見えない。   「竜は、系の象徴だよ。兄貴が、メタルリーフの象徴であるように」  ユウタが伝えようとしたことを見るために朝日を見る、白く綺麗に輝く朝日を浴びながら今度は、前と違ってゆっくりと見る。  鳥が飛んでいるのが見えた、その鳥がとまる木、それに着く草、その草にある虫が、ざわざわと動いている気配を感じる。  視点をあげて海を見る、何か巨大な力を秘めた大きな物体が動いている、見る間に海を割ってそれが大きく飛び出してくる。  優美で黒い力強い体、数千キロをはるかに泳ぎ切るその巨体は、微塵の隙もなく躍動する。 「太陽が、全ての系の象徴ってことなのかな?」 「そういう言い方も出来るね、太陽は竜ではないけど、ほら、海竜」  海を鮮やかに黒に染めて、鯨の群れが進んでいくのを       でかいでかいとふたりでさわいだ、同時に、誰もいない街の静けさが伝わってくる。 「さて、どうやって帰るかなあ」  ユウタのつぶやきに、あらためて司は街を見る、誰もいない街、誰も住んでいない家屋は朽ちるのが早い、楽しそうな思い出のあるはずの小笠原の町並みは自然の豊かさにはんして、虚ろに響く。  巨人の死体、虚ろな骨の残り、そんな言葉も連想させる廃墟の街をみて、司は少しからだが震えた。 「三年も、かかったんですね」  司のふるえを感じて、ユウタは悲しそうに廃墟を見つめた 「人は、竜を狩る。人が乱した環境を整えるのに、それだけかかったんだ」  胸を突かれる、人は環境を変える、そうやって、何かを崩して生きている。  でも、いつまでも弱いままで、何かに保護されるように生きてはいけない。 「人が変わればいいんだ」  悲しそうなユウタの後ろに司は回ると思いっきりたたいた。 「私も頑張るから! そう落ち込まない!」  びっくりしているユウタにニヤットわらって親指を立てる、とりあえずご飯だ!  楽しそうな笑顔をみて、ユウタも同じように笑った、ご飯だごはんだ、地竜も滑るように近寄ってくる。  まずご飯、それは竜も人もかわらないことだ、このすばらしい景色のように